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見積もり以外の追加費用に要注意
葬儀社との打ち合わせで提示された見積金額を見て、予算内で収まりそうだと一安心。しかし、葬儀がすべて終わった後の最終的な請求書を見て、その金額が予想を大幅に超えていて愕然とした、という話は、残念ながら後を絶ちません。こうしたトラブルを避けるためには、当初の見積もりには含まれていない「追加費用」の存在を、事前にしっかりと理解しておく必要があります。追加費用が発生する代表的なケースとして、まず「ご遺体の安置に関する費用」が挙げられます。多くの葬儀プランでは、安置日数が一日か二日で設定されています。しかし、火葬場の予約が混み合っていたり、友引を避けたりすることで、安置日数が延びた場合、その日数分の安置施設利用料やドライアイス代が追加で請求されます。次に多いのが、「飲食費や返礼品の追加」です。当初の見込みよりも参列者が増えた場合、その人数分の食事や飲み物、会葬御礼品が追加で必要になります。特に、通夜振る舞いは人数が読みにくいため、費用が膨らみやすいポイントです。また、見積もりに含まれていると思っていたものが、実は「オプションサービス」だった、というケースもあります。例えば、故人の体を清める「湯灌の儀」や、思い出の映像を流すメモリアルムービーの作成、司会者の依頼などがこれにあたります。そして、最も大きな変動要因となるのが「寺院費用(お布施)」です。ほとんどの葬儀社の見積もりには、この寺院費用は含まれていません。お布施や戒名料は、後から別途、直接お寺にお渡しする必要があり、この金額が数十万円単位になることも珍しくないのです。これらの追加費用によるトラブルを防ぐためには、打ち合わせの際に「この見積もり以外に、追加で発生する可能性のある費用は、どのようなものがありますか」と、はっきりと質問することが何よりも大切です。そして、その回答を書面に残してもらうこと。その誠実な対応が、信頼できる葬儀社を見分ける試金石となります。
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葬儀費用を安くする具体的な工夫
葬儀全体の形式を「家族葬」や「直葬」にすること以外にも、葬儀費用を安くするための、より具体的で細かな工夫がいくつか存在します。葬儀社との打ち合わせの際に、これらの点を意識して交渉することで、最終的な請求額に大きな差が生まれることもあります。まず、見直すべきは「祭壇」です。祭壇は葬儀費用の多くを占める要素ですが、必ずしも豪華な白木祭壇を選ぶ必要はありません。近年では、生花だけで飾る「花祭壇」が人気ですが、これも花の量や種類によって値段が大きく変わります。祭壇そのものを設けず、遺影写真の周りをシンプルに花で飾るだけでも、十分に心のこもった空間は作れます。故人が好きだった花を数本だけ飾る、というのも素敵な演出です。次に「棺」です。棺も、材質や装飾によって、数万円のものから百万円を超えるものまで、値段に大きな幅があります。故人の尊厳を守ることはもちろん大切ですが、見栄を張って過度に高価なものを選ぶ必要はありません。シンプルで清潔な桐の棺でも、十分に立派なお見送りができます。最近では、環境に配慮した段ボール製の「エコ棺」など、安価で機能的な選択肢も増えています。また、故人を偲ぶための「遺影写真」も、葬儀社にすべて任せるのではなく、自分でデータを用意し、引き伸ばしや額装を写真店に依頼することで、費用を抑えられる場合があります。さらに、意外と見落としがちなのが「会葬礼状」などの印刷物です。葬儀社が用意する定型文のものではなく、自分で文面を考え、印刷業者に直接発注すれば、費用を節約できるだけでなく、より心のこもったお礼状を作成できます。こうした小さな工夫の積み重ねが、大きな節約に繋がります。大切なのは、どこにお金をかけ、どこを削るのか、その優先順位を家族でしっかりと話し合うことです。
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葬儀形式でここまで変わる費用相場
葬儀費用は、どのような形式でお見送りをするかによって、その総額が劇的に変化します。自分たちの希望や予算に合った葬儀の形式を選ぶことが、費用を考える上での最も重要な出発点となります。ここでは、代表的な四つの葬儀形式とその費用相場を比較してみましょう。まず、最も伝統的で格式高いのが「一般葬」です。家族や親族だけでなく、故人の友人や知人、会社関係者など、生前お世話になった方々を広く招いて執り行います。参列者が多いため、広い式場が必要となり、飲食接待費や返礼品代もかさむため、費用は最も高額になる傾向があります。相場としては、百五十万円から二百五十万円程度を見ておく必要があるでしょう。次に、近年最も選ばれているのが「家族葬」です。参列者を家族やごく親しい近親者に限定し、小規模ながらも通夜・告別式をきちんと行う形式です。儀式の内容は一般葬と変わりませんが、参列者が少ない分、飲食接待費や返礼品代を大幅に抑えることができます。費用相場は、八十万円から百五十万円程度で、一般葬に比べて大きな負担軽減となります。さらに儀式を簡略化したのが「一日葬」です。これは、お通夜を行わず、告別式から火葬までを一日で済ませる形式です。通夜振る舞いの費用が不要になることや、遠方の親族の宿泊負担を減らせるメリットがあります。費用相場は、五十万円から百万円程度と、さらに抑えることが可能です。そして、最も費用を抑えられるのが「直葬(火葬式)」です。通夜や告別式といった儀式を一切行わず、火葬のみで故人を見送ります。費用は、ご遺体の搬送・安置、棺、火葬料金といった最低限のものだけで構成されるため、相場は二十万円から四十万円程度となります。どの形式が優れているということではありません。故人の遺志や、遺族の想い、そして経済的な状況を総合的に考慮し、最も納得のいくお別れの形を選ぶことが大切です。