父を見送った火葬場での忘れられない一日
父が亡くなったという知らせは、あまりに突然でした。病院のベッドで眠るように穏やかな顔をした父を前に、私はただ立ち尽くすことしかできませんでした。そこからの数日間は、葬儀社の担当者の方に導かれるまま、まるで夢の中を歩いているような感覚で過ぎていきました。告別式を終え、霊柩車が向かったのは、自宅から車で三十分ほどの距離にある公営の火葬場でした。立派な瓦屋根を持つその建物に足を踏み入れると、ひんやりとした、厳粛な空気が漂っていました。案内された炉前ホールで、棺の小窓から見える父の顔と最後の対面をしました。親族が一人ずつ花を添え、手を合わせる。もうこの顔に触れることもできないのだという実感が、津波のように押し寄せ、涙が止まりませんでした。係員の合図で、棺が静かに火葬炉の中へと吸い込まれていく。その扉が閉ざされた瞬間、一つの時代が終わったような、途方もない喪失感に襲われました。待合室で過ごした一時間半は、とても長く感じられました。親戚たちと父の思い出話を交わしながらも、私の心はどこか上の空でした。やがて収骨の案内があり、再びホールへ向かうと、そこには白く清らかな姿になった父がいました。係員の方の説明を受けながら、母と私、弟の三人で、お骨を一つひとつ箸で拾い、骨壺に納めていく。「喉仏のお骨は、仏様が座禅を組んでいるような形をしているんですよ」。その言葉に、私たちはただ静かに頷きました。全てを終え、小さな骨壺を抱いて火葬場を後にした時、空は燃えるような夕焼けでした。父との最後の時間を過ごしたあの場所の光景は、悲しみと共に、私の心に深く刻み込まれています。