葬儀の場で、静かながらも確かな存在感を放つブラックパール。その独特の深い輝きは、多くの人々を魅了します。一般的に「黒真珠」と呼ばれるこのパールの多くは、正式には「黒蝶真珠(くろちょうしんじゅ)」と言い、その名の通り、黒蝶貝という特定の母貝からしか採れない、非常に希少価値の高い真珠です。その神秘的な魅力と価値は、どこから来るのでしょうか。黒蝶真珠の主な産地は、南太平洋に浮かぶタヒチの島々です。美しいラグーンに生息する黒蝶貝は、非常にデリケートで、水質や水温の変化に敏感なため、その養殖は極めて難しいとされています。また、一つの貝から採れる真珠は、通常一個だけ。しかも、そのすべてが宝飾品としての価値を持つわけではなく、形や色、輝きなど、厳しい基準をクリアしたものだけが、市場に出回ることが許されます。この希少性が、黒蝶真珠の価値を高める第一の要因です。そして、その最大の魅力は、何と言ってもその色彩の豊かさにあります。ブラックパールは、決して単一の「黒」ではありません。その表面には「干渉色」と呼ばれる、光の反射によって生まれる複雑な色が浮かび上がります。最も評価が高いとされるのは、孔雀の羽のような、緑と赤が混じり合った「ピーコックグリーン」ですが、その他にも、深みのあるグリーン系、クールな印象のグレー系、温かみのあるレッド系、さらにはピスタチオやシャンパンゴールドといった稀少な色も存在します。この、一つとして同じものがない、自然が生み出した色彩のグラデーションこそが、黒蝶真珠の神秘的な魅力の源泉なのです。その価値は、真珠の「大きさ(サイズ)」「形(シェイプ)」「色(カラー)」「光沢(テリ)」「巻きの厚さ」「傷(キズ)の有無」といった要素を総合的に評価して決まります。弔事の装いとしてだけでなく、大人の女性の品格を高める一生もののジュエリーとして、その価値は時代を超えて輝き続けるのです。
黒蝶真珠その神秘的な魅力と価値